昨年の寅と違って、卯はいつも近くにいます。パソコンに向かって仕事をすると、かわいいウサギが目の前にすわっております。実は、父が子供の頃に遊んだシュタイフのぬいぐるみです。ベルベットの毛皮が何回もさわりたくなるほど気持ちがよく、色が全く落ちていません。ひげが半分欠けて毛皮が少し汚れても、ガラスの大きな目が相変わらずきらきら輝いています。本当はいつのものかはわかりませんが、生まれたのは70年以上前と思え、ぬいぐるみとはいっても本当に長生きしているウサギです。
シュタイフ社のぬいぐるみは丈夫で、生きている動物に近い感じでありながら、大変かわいいと評判です(その代わり、いい値段はしていますが・・・)。1902年に世界で初めて世界各国で人気者となったテディベアを作ったのも同社です。
また、創業者のマルガレーテ・シュタイフは本当にたくましい人でした。子供の頃に脊髄性小児麻痺にかかって車いすの生活を送っても、彼女はあきらめず洋裁師として成功し、1880年に象の形をしたフェルトの針刺しを作る会社を創立しました。会社のトレードマークは今でも動物の耳に挟んである金属のボタンと黄色のタッグです。
ところで、経費削減を目指して、シュタイフ社がぬいぐるみの製造を2004以降、中国の工場で行うことにしましたが、その結果としては人気が大きく落ちてしまったようです。消費者は「何でも中国製」に慣れてはきましたが、出荷時間があまりにも長いだけではなく、中国製おもちゃの汚染物質スキャンダルが相次ぎました。さらには複雑なパターンを持ってかわいいぬいぐるみを作る作業は大変複雑で、シュタイフ社の工場で働く職員が入社すると、半年以上のトレーニングを受けることになっています。転職が早い中国ではこの慎重な教育が無駄になり、製造を昨年一杯で完全にドイツに戻すことになりましたことがドイツのメディアに大きく取り上げられました。
子供の頃に父にもらった大事なウサギのぬいぐるみを眺めながら、いろいろと考えてきました。マルガレーテ・シュタイフのように、いろいろな問題に直面しても、がんばれば成功するでしょう。品質の優れた商品には長いトレーニングと熱心が必要で、無理な経費削減を避けた方がよいものです。いろいろな思い出や考えがこもっているので、ものを大事にしましょう。
やはり今年もがんばりますので、今年もよろしくお願いします!
(2011年元旦)
最終更新:2011年1月1日
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