ドイツの 教育制度に基づき、学校教育が連邦の担当ではなく、州の担当にありますので、具体的なカリキュラムや授業の内容などが州によって異なります。ここではラインラント=プファルツ州一つの例をご紹介したいと思います。
ラインラント=プファルツ州では、州の教育・科学・養成省(Ministerium für Bildung, Wissenschaft und Weiterbildung)が1999年に交通教育に関する方針を打ち出しました。この方針に基づき、学生が義務教育の間に安全教育、社会教育、環境教育と健康教育を含む交通教育を受けることになっています。
安全教育がもちろん交通安全の向上を目的にし、交通教育の本来の目的です。さらに重視されている社会教育が社会弱者への配慮を育てようとし、環境教育が公共交通機関や自転車など、環境にあまり負担をかけない交通手段に関する意識を上げ、目的にふさわしい交通手段の選択を進めようとしています。そして、自転車利用や徒歩の健康効果などをテーマにしている健康教育も運動不足に悩まされている現代社会にとても重要です。
州の計画に基づき、職業訓練の授業を含めて、18歳未満の学生がいるクラスが交通教育を受けることになっていますが、「交通教育」という科目は実はありません。なぜなら、今までの経験からいえば、直接に誘導や禁止しても、人間があまり聞いてくれないからです。そこで工夫し、交通教育をむしろ様々な科目に組み込み、年齢相応の形で行うことになっています。例えば、美術の授業で夜に目立つ色やデザインを考え、数学の授業で車と自転車が必要としている駐車スペースを比較し、国語の授業で運転免許を持っている大人へのインタビュー調査を行い、生物学の授業ではアルコールが体に与える影響を考えることなど、課題の出し方によっては普通のカリキュラムの中で交通のことを考えることができます。
最終更新:2006年2月6日
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