欧州内では、人口の75%が都市に暮らし、域内総生産の85%を占めています。ベネルックス、ドイツとイギリスの都市化が一番進んでいますが、アメリカや日本と比べて、欧州の都市は決して大きくありません。ベルリン、ハンブルク、ミュンヘンとケルンのみが人口100万人を超え、10万人都市でもドイツでは立派な大都市とされています。一番小さい「市」が人口300人以下です。それよりも小さい町村が数えきれないほどあります。
都市規模が違っても、ドイツと日本の都市は共通の課題に直面しています。高齢化社会や人口減少、人口が流出している地方都市と相変わらず成長している大都市圏の地域格差などがその最たるものです。仕事に関する移動、一人家庭や母子家庭などがさらに増えていく中で、暮らしと街も少しずつ変わってきます。
これらの課題に関しては、「持続可能な都市発展」のキーワードを最近よく耳にします。「持続可能な都市発展」は建物や道路など、ハードの計画にとどまらず、経済、社会、教育、文化や自然環境など、都市に関するあらゆるテーマや課題を視野に入れたものです。その結果、知識とイノベーション、創造力、魅力的な公共空間、都市や地区の中心市街地における居住や賑わい、史跡保存と中心市街地の演出、経済と雇用、 エネルギー効率、都市型の環境保護と気候保全、空き地と建物の転用と賢い使い方、移動が少ない集約型都市や住民にも街にも優しい都市交通などが近年議論されています。
この持続可能な都市発展を通して、この持続可能な都市発展を通して、都市間の競争に勝ち抜くことが狙いです。なぜなら、暮らしやすくて教育水準が高い人が住んでいる街が特に先端技術を抱えている企業にとって魅力的からです。さらに、歴史的な町並みや魅力的で交通アクセスが良い都市空間が郊外のショッピングセンターにうまく対抗できます。
街の競争力や持続可能な都市発展を考えると、「ライプツィッヒ憲章」を無視できません。EU各加盟国の都市開発や空間計画などを担当する大臣が2007年にドイツのライプツィッヒで集会し、欧州内の市町村の社会、競争力と地域間の協力を深めるための議論をした結果として、ライプツィッヒ憲章が発表されました。
1933年のアテネ憲章が唱えた職住分離や離れたレクリエーション空間を持っている機能主義を捨て、ライプツィッヒ憲章は混合利用の集約型都市を理想に掲げています。住む場所、仕事をする場所やレクリエーションを楽しむ場所が細かく入れ混ざっているので、遠い移動、広い道路や大型のショッピングセンターが不要で不便になります。郊外の開発よりは、既成市街地の快適化が優先です。多様な街は歩くことや滞留することが楽しくて生き生きするだけではなく、人口が偏る確率が低いので社会的にも安定しています。また、収入、社会構成や教育水準などに関する地区格差が大きくなる傾向にあるので、都市内の地区格差を緩和することも安定した社会のために必要です。さらには、欧州都市は市民のものであるので、ライプツィッヒ憲章はすべての計画における住民参加を重視しています。
ドイツ国内でも、連邦、州と市町村が既成市街地の快適化、全市域に関して作成する開発方針と全ての関係者との議論を重視してきました。例えばハンブルク市が作成中の「中心市街地コンセプト」のように、数段階の住民参加を行い、早い内に幅広く議論されたマスタープランの作成がドイツ各地で見られます。
責任をなるべく小さい行政単位に渡す補完性原理と地方分権を重視したドイツでは、国は市町村の都市計画や交通計画などに関して口を挟めませんが、連邦やEUの補助金をもらおうとする地方自治体は一定の条件を満たすべきです。補助金とつながるプロジェクトとしては連邦が地区レベルの社会問題解決へ貢献するためには行っている「社会都市」事業や人口減少をテーマに行っている「旧東ドイツの都市改造」と「旧西ドイツの都市改造」などが挙げられます。
しかし、補助金以外にも持続可能な都市発展に関する取り組みが数多くあります。その中には例えば欧州委員会が2010年にスタートした「欧州グリーン首都」や都市発展の解決策を探るために市町村が開く国際建設博覧会(IBA)などがあります。また、ハーフェンシティが欧州最大の港湾再開発事業として注目を浴びています。
最終更新:2017年10月4日
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