2006~2013年に開かれている国際建設博覧会「IBAハンブルク」は、多くの都市問題を抱えている「ヴィルヘルムスブルク地区」をモデル地区にしています。おしゃれな中心市街地に隣接しながら、エルベ川の中洲に位置しているこの地区には、道路、鉄道や港湾施設の交通インフラが集中しています。さらには工場、大型団地や農村風景がごちゃごちゃ混ざっています。住環境があまり良くなく地価と家賃が安いので、失業者、低所得者と外国人が非常に多く住んでいます。
デメリットがこんなに目立っても、この地区は大きなポテンシャルを持っています。中心市街地に近く、交通の便がよいので、都市問題さえ解決できればこの地区は住みやすくなるはずです。このような地区に住宅を増やすと、都市の郊外化を制限できるかもしれません。工業跡地を転用し、すでにある緑地を維持すれば、住環境が良くなるはずです。地区のイメージアップを図ることも必要です。このIBAのテーマ通りに「(街を分断して流れる)エルベ川を飛び越えて」全市での意識を高めることも問われています。
地区の改良を目指して、IBAは3つのプロジェクト部門を設定しました。それぞれの具体的な内容は、多国籍の都市住民のポテンシャルを引き出す「コスモポリス」、栄えている地区の間に挟まっている問題地区の「メトロゾーン」、再生可能エネルギーと資源再利用を目指す「気候変動における都市」です。
少なくともそのうちの一つの部門に属し、先端的な取り組みと面白いアイデアを含むものであれば、IBAのプロジェクトとして採用される可能性があります。住民、企業や団体、個人の誰でもプロジェクトを提案できます。採用されたプロジェクトは、2010年の中間報告と2013年の最終プレゼンテーションで紹介されます。また、2013年には「国際園芸博覧会(IGS)」が同じ地区で開かれ、IBA、IGS初の同時開催となります。
現在は様々なプロジェクトがすでに採用されています。事務所や大学関連施設と住宅が建設され、再生可能エネルギーを生産できる公園が整備され、外国人居住者へのドイツ語教育を重視した生涯学習施設が計画されています。しかし前提として、何としても地区の「ジェントリフィケーション」、つまり再開発による地価の上昇と比較的豊かな住宅地へのシフトを避けるべきというコンセンサスがあります。むしろ低所得者とミドルクラスの人、ドイツ人と外国人、若者と高齢者など、なるべく多様な人が混在して活気があり安定した住環境を形成することがこのIBAの目的です。思い通りに行くでしょうか?2010年には、とにかくIBAの中間報告が公開されました。
「IBAハンブルク」の多様なプロジェクトの中から、面白いものをいくつかここでご紹介したいと思います。
ところで、再生可能エネルギーに関するIBAハンブルクのプロジェクトに関しては、エネルギーのページをご確認ください。
最終更新:2011年1月28日
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