今の時代になって、30年代に造船所で働く労働者とその家族のために開発された住宅街が住みにくくなっています。断熱が良くないために暖房が高く付き、部屋割り、広さや設備の使い勝手はあまりよくありません。その結果としては家賃が安く、低所得者や外国人居住者が住み、下手をすると地域社会が偏る恐れがあります。
ヴィルヘルムスブルク地区の「全世界の街」がその典型となっています。およそ30カ国から出身した1700名の多国籍社会がこの街区に暮らしています。
この街区を改良し、持続可能な街を形成するために、大規模の改造工事が国際建設博覧会のIBAハンブルクのプロジェクトとして実施されています。
まずは居住者のニーズを把握することが重要でした。最初のステップとしてはそれぞれの世帯と同じ国籍の学生を雇って、住環境や暮らしに関する期待を把握する聞き取り調査が実施されました。快適な住宅を考えるワークショップがさらに開かれ、その結果に基づく景観と住宅に関するコンペが開かれました。その結果としては街の特徴である赤煉瓦のファサードを残しながら公共空間や住宅を整理することになり、440世帯の住宅を改造し、77世帯の住宅をリフォームし、206世帯の住宅を新設することになりました。着工が2009年で、IBAプロジェクトの中で一番早いものでした。
暖房断熱、防音効果のある窓、部屋割りの調整、バルコニーの増設など、建物の改造が徹底しますので、居住者が一時的に別の住宅に引っ越す必要がありました。ほとんどの人がそれでも元の住宅に戻りました。
住宅の改造と共に、公共空間の改造が実施されました。建物の間に位置するヴァイマル広場に各方面からアクセスできるようにするために一件の建物を撤去する必要がありましたが、公共空間のネットワークがその結果として充実し、子供が安心に遊び、移動できる道が確保されました。また、段差がほとんど解消された広場の公共空間と住宅の敷地の間にプライバシーを守るための低い壁を設置することになりましたが、ベンチとテーブルが常設されているこの壁が同時に遊んでいる子供たちを守るなどのために活用されている滞留空間となっています。自動車が相変わらずこの広場を通ることができますが、ゾーン20の規制がかかり、人と車の共存が目指されています。
また、居住者が以前から望んできた街区の公民館が広場内に建設されました。居住者の誰でもがこの建物をパーティーや集会などのために借りることができます。面積約140m2の建物が二つの広い部屋、台所やオフィスを含み、屋根が緑化されています。建物の消費するエネルギーが隣接する建物の屋上に整備されるソーラーパネルから得ることになっています。
この街区に住んでいる多国籍社会を公共の空間に反映する工夫もあります。その一つは広場の舗装に点在する大きなコンクリートタイルです。広場沿いに住んでいる女性たちの手作りの編み物がこのタイルの模様となり、編んだ人の名前まで書いてあります。
公共の緑地にさらに居住者の庭を分配することになっています。生け垣に囲まれて、面積36m2の庭を個人で借りることができ、数世帯で一緒に使うこともできます。庭の使い方がいろいろ考えられます。野菜を作っても良いが、子供の遊ぶ空間、皆で集まっておしゃべりをする空間、ピックニックする芝生や花壇など、何でもかまいません。
「全世界の街」プロジェクトが主にハンブルク市営の住宅会社SAGA GWGにより実施され、広場などの公共空間に関しては中区が主役となっています。全ての住宅が賃貸です。
最終更新:2012年6月12日
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