都市問題解決の実験プロジェクトである「国際建設博覧会(IBA)」をご存知ですか。
それぞれの時期と場所の都市建設課題に応じてドイツ各地で不定期に開かれるIBAは、20世紀当初の「都市建設に関する最新技術を展示するイベント」から最近の「具体的な都市問題の解決を探るプロセス」に進化しました。日本でもよく知られている「IBAエムシャパーク」がちょうどその転換点となっています。 今まで開かれたIBAには以下の特徴があります。
いつ? | どこ? | テーマと特徴 | イメージ |
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フェーズ1:新しい都市への出発 | |||
1901年 | ヘッセン州 ダルムシュタット市 |
「マチルダの丘(Mathildenhöhe)」。都市計画、建築や日常雑貨と家具のデザインを含む、統一した新しい都市デザインを紹介したIBAです。 (撮影:Störfix*) |
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1927年 | バーデン= ヴュルテンベルク州 シュツットガルト市 |
「ヴァイセンホフ団地(Weißenhofsiedlung)」。ル・コルビュジエ(Le Corbusier、1887~1965年)やグロピウス(Gropius、1883~1969年)など、バウハウスの有名な建築家がこのIBAですっきりした住宅を都市居住者に提案しました。 (撮影:Shaqspeare*) |
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1952年 | 東ベルリン | 「スターリン大通り」。正確に言うとIBAのプロジェクトではありませんが、西ベルリンのIBAに対向し、社会主義の理想都市を描こうとしている取り組みとしてIBAと列挙されることが多く見られます。 (撮影:Freital) |
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1957年 | 西ベルリン | 「インターバウ(Interbau)」。戦災を受けた都市の再建がこのIBAのテーマでした。東ドイツの都市建設理念に抵抗しながら、「区分された低密度の都市(die gegliederte und aufgelockerte Stadt)」が西ドイツの都市理念に掲げられました。 (図:Sascha Pöschl) |
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フェーズ2:既成都市・空間の再発見 | |||
1984年と 1987年 |
西ベルリン | 戦災や再開発のために失われつつある戦前建築に着目し、中心市街地の密集化である「街修復(Stadtreparatur)」、住宅の建築遺産を修復する「批判的復元(kritische Rekonstruktion)」と住民参加の「慎重な都市改新(behutsame Stadterneuerung)」が考案されました。このIBAの結果、ドイツの都市理念が大きく変わりました。 (撮影:S[1] *) |
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1999年 | ノルトライン= ヴェストファーレン州 17都市 |
「IBAエムシャパーク(IBA Emscher Park)」。旧工業地帯の環境、経済と文化に関して数多くのプロジェクトが実施され、経済振興、観光促進や産業跡地の再自然化が行われました。近代史や景観計画、住民参加や都市建設における品質管理などが話題になりました。 (撮影:Arnoldius*) |
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2000~ 2010年 |
ザクセン州 ラウジッツ地方 |
「IBAフュルスト・ピュックラー・ランド(IBA Fürst-Pückler-Land)」。地元の住民や専門家の協力を募り、褐炭露天掘りの跡地を湖に再整備し、観光を促すIBAです。産業遺産の保存と転用もテーマになっています。 (撮影:LeonRascal) |
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2003~ 2010年 |
ザクセン= アンハルト州 19都市 |
「IBA都市再構築2010(IBA Stadtumbau 2010)」。人口の流出が後を絶たない縮小する都市の再構築と集約型都市への道を模索するIBAです。意識を高めるために、住民参加のプロジェクトも各地で行われています。 (撮影:Ralf Lotys*) |
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2006~ 2013年 |
ハンブルク市 ヴィルヘルムスブルク地区を中心に |
「IBAハンブルク(IBA Hamburg)」。「エルベ川を飛び越えて」をテーマに、川により中心市街地から分断されている地区に関する意識を高めながら、多くの都市問題を抱えている旧工業地区の住環境改良を目指しています。 | |
2010~ 2020年 |
スイス、ドイツ、 フランス バーゼル市 都市圏 |
「IBAバーゼル2020」。3カ国にわたる多言語の都市圏をテーマに、国際協力の新しい形を探っています。主な目的は持続可能な都市圏成長を確保し、国境を問わない都市圏のアイデンティティと居住者の愛着を強めるです。 (撮影:Roland Zumbühl/Picswiss*) |
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2011~ 2020年 |
オランダ パルクシュタッド・ リンブルフ都市圏 |
「IBAオープン・パルクシュタッド・リンブルフ」。ドイツに隣接する都市圏(1998年設立、8つの都市)においてオランダで始めてのIBA。自然環境が多いが、定まった中心がない、大変多様な都市圏の再構築がテーマとなっています。 (撮影:Jvoncken*) |
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2011~ 2023年 |
テューリンゲン州 | 「IBAテューリンゲン」。全州が対象となり、高齢化社会、再生可能エネルギーの普及や環境保全が課題となっています。そのためには文化と暮らしの「市街地」,インフラ、モビリティや四職の「ネットワーク」と自然環境の「景観」が主なテーマとなっています。 (撮影:Michael Sander*) |
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2012~ 2022年 |
バーデン= ヴュルテンベルク州 ハイデルベルク市 |
「IBA知識が街を造る」。知識社会に適した都市発展をテーマに、住民参加、大学、学校、NPO法人、企業、協会など、全市において数多くの人や団体が参加することは目的です。具体的な目的やプロジェクトの概念がまだ議論中です。 (撮影:Immanuel Giel) |
最終更新:2012年6月12日
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写真と図はウィキメディアコモンズのファイルに基づきます。 「マチルデン丘」の写真はこの写真に基づきます。 撮影:Störfix。 ライセンス:Creative Commons Attribution ShareAlike 2.5 License。 「ヴァイセンホーフ団地」の写真はこの写真に基づきます。 撮影:Shaqspeare。 ライセンス:Creative Commons Attribution ShareAlike 2.5 License。 「スターリン大通り」の写真はこの写真に基づきます。 撮影:Freital。 ライセンス:Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported License。 旧市街地の写真はこの写真に基づきます。 撮影:S[1]。 ライセンス:Creative Commons Attribution ShareAlike 2.5 License。 エムシャパークの写真はこの写真に基づきます。 撮影:Arnoldius。 ライセンス:Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 License。 取り壊されている団地の写真はこの写真に基づきます。 撮影:Ralf Lotys。 ライセンス:Creative Commons Attribution ShareAlike 2.5 License。 バーゼルのカーニバルの写真はこの写真に基づきます。 撮影:Roland Zumbühl/Picswiss。 ライセンス:Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported License。 パルクシュタッド・リンブルフの写真はこの写真に基づきます。 撮影:Jvoncken from NL。 ライセンス:Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported License。 エアフルト市の写真はこの写真に基づきます。 撮影:Michael Sander。 ライセンス:Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported License。