ドイツの伝説には数多くの竜が登場しますが、ドイツの竜は日本の竜と大きく異なります。日本の竜はめでたい存在ですが、ドイツの竜は結構怖い獣です。どこかのヒーローが登場し、竜に勝ち、地域を救うことは一般的に話の流れです。しかし、竜の伝説と関係する地名も少なくありません。
例えば、ボンよりやや南にライン川沿いにある「竜の岩(ドラヘンフェルス)」という山はその一つです。伝説によりますと、昔々、山の奥の穴に暮らしていた竜が周辺の人々や動物を長年脅かしていました。この竜に勝つことができる勇者が一人もいなく、定期的に人間を犠牲にして、竜の穴まで送ることになっていました。しかし、ある年は、若くて美しい少女を犠牲として竜野アナに送ることとなりました。少女が小さな十字架を竜に見せた結果、竜がびっくりしてライン川に落ちていなくなってしまいました。少女が村に戻って、大変幸せとなり長生きしました。おめでたしおめでたし。 しかし、「ドラヘンフェルス」という地名の本当の由来は岩盤と関係し、伝説が後からできた話もあります。
「ドラヘンフェルス」が実は大昔の火山活動から発生し、粗面岩からできています。ローマ時代から建設財として採掘されてきた粗面岩が「トラヒート(粗面岩)」といい、この言葉がなりげなく「ドラヘン(竜)」へ進化したそうです。
大学はボンでしたので、観光地として有名な「ドラヘンフェルス」に何回も出かけてきました。山頂には12世紀に建設されたお城の跡があり、山腹には19世紀の豪華な邸宅があります。かなり古いラック式の登山鉄道もあります。
12世紀のお城がケルンの大司教により建設されましたが、その後の持ち主が粗面岩の採掘により大変お金持ちになりました。なぜなら、「ドラヘンフェルス」の粗面岩がケルン大聖堂など、近代までに教会の建設に広域的に人気があったからです。お城が30年戦争の際に破壊されただけではなく、岩盤採掘のために虫歯状態になった山が18世紀末に崩れたために、お城のほんの一部しか残っていません。
「ドラヘンフェルス」が昨年、大きく変わったそうです。70年代に山頂で開かれたコンクリート建築のレストランの代わりに景色ともっとなじむ建物が建設され、山腹の邸宅が修復され、博物館として公開しました。
せっかくの辰年だから、今年こそは久しぶりに「ドラヘンフェルス」を見に行きたい!
(2012年元旦)
最終更新:2012年1月1日
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