「みずうみ」などの小説を書いた作者テオドール・シュトルムの故郷フーズムは北ドイツの西海岸にある小さな港町です。人口はおよそ2万人で、お城の芝生を毎年の春に紫に染めてくれるクロッカスの花が有名です。
このフーズムの街は、幻の豚の出身地です。ドイツでもあまり知られていませんが、この種の不思議な名前は「フーズムの反対運動豚(Husumer Protestschwein)」で、動物園にも飼われるぐらい珍しいい種です。色が赤く、肩に白い帯があり、この豚は確かに見た目も珍しく、面白いものです。
愉快な豚の歴史が19世紀末に始まりました。
フーズムは現在、ドイツ最北の州であるシュレースビッヒ=ホルシュタインにありますが、この地域がデンマークの一部となったり、ドイツの一部となったりする歴史を持っています。その結果、特に州の北部にはデンマーク人が昔から数多く暮らしています。
長年デンマークの一部であったシュレースビッヒ=ホルシュタインが1871年にドイツ帝国の一部となった結果、デンマークの国旗を地域内で挙げることは禁止されました。もちろん、デンマーク人が納得できず、自分の国家に関する誇りを表現するたくらみを始めました。デンマークの国旗は赤地に白のスカンディナービア十字ですので、赤と白のものさえあれば、「デンマーク」を十分に表現できます。
農家が多い地域でしたので、デンマーク人たちのたくらみが独特な形をとりました。昔からある、肩に白い帯の豚の種と、赤い豚の種を交配し、その結果としてできた「赤地に白い帯」の「フーズムの反対運動豚」を前庭で飼うことにしました。
「フーズムの反対運動豚」が1954年に初めて種として公式的に認められましたが、デンマーク人の気持ちが落ち着いたか、豚が大量生産に向かないか、現在はおよそ150頭しか残っていないようです。その結果、州の豊かな歴史やユーモラスでがんこうな農民のシンボルとなったこの種を保つためには、シュレースビッヒ=ホルシュライン州は現在、「フーズムの反対運動豚」を特別に保護することになりました。
なお、豚がドイツで一般的に幸運を運んでくれるものと思われています。「幸運を持つ」ことを「豚を持つ(Schwein haben)」と表現することもあり、小さな豚の人形をお守りに使う人もいるようです。
今年は幸運を運んでくれる亥の年で、皆様のご健康とご多幸をお祈り致します。
(2007年元旦)
最終更新:2008年1月1日
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