砲台兼防空壕の建物をトーチカといい、膨大なトーチカが戦時中に軍隊の力を見せつけるためにベルリン、ハンブルクとウィーンの市内で整備されました。街のど真ん中にあるあまりにも膨大で頑丈な建物であるが故、戦後の処分が困難でした。その結果、トーチカの残骸がいずれの都市にも眠っています。
ハンブルクのヴィルヘルムスブルク地区に残っている1943年のトーチカは1947年に英軍により爆破させられました。しかし、およそ8万m3の鉄筋コンクリートから造られた高さ41.6mの建物がその際にちょっと飛び上がっただけで、破壊不可能でした。建物の中身だけがくしゃくしゃになりました。住宅街が隣接するので、爆薬をさらに使うことも論外でした。
公園のど真ん中に長年ほったらかされたこのトーチカに新たな機能を持たせることが国際建設博覧会のIBAハンブルクの一つのプロジェクトになりました。トーチカがエネルギーの製造工場とエネルギータンクに生まれ変わります。
再生可能エネルギーに関する工夫がいくつか提案されています。木材チップを使うブロック型発熱装置が地下に整備され、発電と発熱のためのソーラーパネルを屋上と南のファサードに設置する予定があります。この二つの装置から発生する熱エネルギーを周辺の約800世帯の住宅に提供することを担っています。また、熱エネルギーが不要である夏の間にトーチカ内の膨大の温水タンクを暖め、熱エネルギーを保管することになっています。将来は近くの工場の廃熱を同じくためて、もっと広い範囲の地域暖房を実施する計画もあります。
さらには、この建物の歴史を思い出し、建物を体験する工夫もあります。そのために歴史に関する展示場と屋上の展望台とカフェが計画されています。
このプロジェクトはハンブルク市営のエネルギー提供会社「ハンブルクエネルギー」により実施されていますが、ハンブルク州の都市建設環境省、区の史跡保存行政、一般市民がやっているNPO法人の「歴史工房」や民間のデベロパーなども関わっています。
戦争と破壊のむなしい印がこのように新しい意味を生み出し、街の発展と人の暮らしに貢献するようになります。
最終更新:2012年6月12日
© Susanne Elfferding. All rights reserved.