「車の案内標識があっても役に立たないなぁ・・・」と、自転車を漕いだときに思ったことがありませんか。自転車専用の標識がドイツ各地で普及してきたので、その悩みが解消しました。
車の案内標識と異なり自転車の案内標識に関する法令が無くても、全国で有効な技術基準があるので、標識の大きさと内容や基本的なデザインが統一しています。文字の色など、細かいことだけが州によって異なります。例えば自転車に注意を引く赤い文字がハンブルク市やノルトライン・ヴェストファーレン州で使われており、自転車が環境に優しい「グリーン」な交通手段であることを強調する緑色の文字がニーダーザクセン州やラインラント・プファルツ州で使われています。
普段見られる自転車の標識が日常ルートの目的地と目的地までの距離を案内し、駅、川の渡し船、バイク・アンド・ライド施設や観光案内所への方向など、サイクリストにとって便利な情報をわかりやすいシンボルマークで伝えています。標識の下にぶら下がっているロゴマークは観光ルートの「長距離自転車道」を案内する標識です。多くの「長距離自転車道」にはさらに沿道の観光情報やルートと地形の特徴などを案内する看板があります。案内標識を設置する前に、広域的な自転車交通ネットワークを設計する作業がもちろん必要です。
広域的な自転車道ネットワークは日常ルートと観光ルートからなり、道路ネットワークと同様に広域的な幹線ルートと地区内の補助的なルートを持っています。自転車の利便性を高めるネットワークを考えるために、既成の自転車道を把握した上で各地の利用者層とその目的地、それぞれの交通手段の交通量や自転車の交通需要を調査します。住宅地、学校、商店街やレジャー施設など、自転車交通が多い場所が計画作成の段階で特に注目され、すべての情報が地図化されます。自転車道ネットワークにまだ欠けているルート、事故多発地区や通学に使われている道の整備が最優先です。
誰にとっても使いやすい連続的な自転車交通ネットワークの形成が技術基準によって求められています。その際はゆとりのある道路区間よりも狭い道路や交差点など、自転車にとって危ないところの改良が求められています。サイクリストもいろいろですので、走りやすくて安全である子供用の道とスピードを出せるスポーツ指向者用の道を平行して整備することもあります。さらには、日常の自転車道ネットワークと観光用の自転車道ネットワークを国内外で隣接するそれぞれのネットワークとつなげることが必要です。ところで、ノルトライン=ヴェストファーレン州やヘッセン州など、ルートをインターネットで検索し、地図に落とせるウェブサイトが最近増え、利便性がますます高まっています。
狭い道路に関しては自転車に適した空間を慎重に作ることが重視されています。歩道内に自転車道を整備し、歩行空間を奪うことよりは、車道内に自転車の車線を確保することは優先ですが、それが不可能の場合はクルマのスピードを30キロに減速させることにより自転車の安全を確保できるかどうかを検討するべきです。ようするに、道路の特徴とそれぞれの交通手段の局地的な交通分担率に配慮した、バランスを取った道路空間が目指されています。
ネットワークの計画が大抵州単位で行われていますが、計画主体はそれぞれです。高速道路や幹線道路の整備に対する住民の猛反対が増えることを背景に、お金はあまりかからないがPR効果が大きい自転車道ネットワークの整備に手を出している道路管理者もあります。その好例としてはラインラント=プファルツ州の「道路交通公団」を挙げられます。
参考:
エルファディンク・ズザンネ
ドイツの自転車道網整備における計画基準と標識基準
KEIO SFC JOURNAL Vol. 6 No. 1、p. 104~123(2007年4月)
最終更新:2009年8月28日
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